インバウンド需要の拡大は、日本のホテルリート市場に大きな追い風となっています。訪日外国人旅行者数が急増する中で、宿泊需要の高まりはホテルリートの収益向上に直結しています。以下では、ホテルリートの特徴と代表的な銘柄について詳しく解説します。
ホテル主体型リートの代表格:インヴィンシブル投資法人
インヴィンシブル投資法人(8963)は、ホテルを主体としたリートであり、全ポートフォリオの約93.7%をホテルが占めています。残りの5.9%は住居、0.4%は商業施設となっており、インバウンド需要の恩恵を受ける宿泊特化型のリートとして知られています。
2024年12月18日終値:65,200円、予想分配利回り:6.01%
この高い利回りは、インバウンド需要の増加や稼働率の向上による収益改善が背景にあります。
インヴィンシブル投資法人を「買い」と判断する理由
【1】インバウンド需要の増加
訪日外国人観光客数の急増が、宿泊施設の需要を大きく押し上げています。2024年には訪日外国人数が3,000万人を超え、コロナ前のピークであった2019年を大きく上回る水準が見込まれています。この成長の背景には、日本政府が推進する観光政策やビザの緩和措置が挙げられます。さらに、LCC(格安航空会社)の路線拡大や円安による旅行コストの低下も、インバウンド需要を後押しする要因となっています。
インヴィンシブルは、宿泊需要の急増を受け、ビジネスホテルやリゾートホテルを中心とした多様な宿泊施設へ投資を強化しています。インヴィンシブルのポートフォリオは、訪日観光客のニーズに対応する構成となっており、観光地に位置する施設が好調な稼働率を維持しています。このような施設への投資拡大は、今後も収益の安定性を支える重要な要素となります。
【2】高い稼働率とRevPARの回復
コロナショックで大きく低下した宿泊施設の稼働率は、2024年に入り着実に回復しています。インヴィンシブルが保有する施設の稼働率は、平均して90%近くに達しており、コロナ前の水準を上回る勢いを見せています。また、収益性の指標であるRevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)も、2023年後半から急速に改善しています。
この収益性の向上は、訪日観光客の増加に加え、施設運営の効率化によるものです。インヴィンシブルでは、稼働率の維持と客室単価(ADR)の引き上げを両立させることで、RevPARの持続的な上昇を実現しています。ビジネスホテルでは出張需要の回復が追い風となり、稼働率が安定。一方、リゾートホテルでは観光需要の増加により高い客室単価を確保することが可能となっています。こうしたバランスの取れた施設運営は、リート全体の収益向上に寄与しています。
【3】安定した財務戦略
インヴィンシブルの強みの一つは、安定した財務基盤にあります。インヴィンシブルは資金調達手段の多様化や借入期間の長期化、返済期限の分散化を積極的に進めており、これにより市場環境の変化に柔軟に対応できる体制を整えています。2024年には、初の個人投資家向け投資法人債を発行し、60億円の資金を調達しました。この動きは、機関投資家だけでなく個人投資家からの支持を広げるための戦略的な取り組みといえます。
さらに、同年には信用格付けがA+に引き上げられ、財務の安定性が一段と強化されました。借入期間の平均残存年数も2.4年から3.5年に延長されており、返済リスクの分散が図られています。このような財務戦略は、日銀の金融政策転換による金利上昇リスクを抑えつつ、安定した分配金の提供を可能にしています。安定した財務基盤を背景に、インヴィンシブルは引き続き積極的な投資を行い、収益の拡大を目指しています。
Jリート市場の注目銘柄と分配金の魅力
Jリート市場(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託の一つ)にはホテルリート以外にも、多様な分野で投資機会が広がっています。物流施設やオフィスビル、商業施設を主体とするリートも高い利回りを提供しています。以下に代表的な銘柄を紹介します。
※分配金利回りは12月18日時点の1口当たり分配金を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算しています。
コード | 銘柄名 | 投資対象 | 分配金利回り(年率予想) | 最低投資額 |
8963 | インヴィンシブル投資法人 | ホテルなど | 6.01% | 65,200円 |
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | オフィスビル | 3.90% | 122,800円 |
3281 | GLP投資法人 | 物流施設 | 5.45% | 121,200円 |
3292 | イオンリート投資法人 | 商業施設など | 5.44% | 123,000円 |
ホテルリートは高い利回りが特徴ですが、物流施設リートやオフィスビルリートも安定した配当を提供しており、分散投資の観点でこれらを組み合わせるのも有効です。
Jリートのメリット:小口投資と分散投資の柔軟性
Jリートの魅力は、不動産への小口投資が可能である点にあります。一等地の大型ビルや高級ホテルなど、個人では購入が難しい物件への投資を、数万円から可能にします。さらに、複数のリート銘柄に分散投資することで、リスクを軽減する効果も期待できます。
定期的な分配金
Jリートは収益の90%以上を分配金として還元する仕組みを持ち、利回りが高い点が特徴です。東証に上場する全Jリートの平均分配金利回りは約5.1%と、銀行預金や国債に比べてはるかに高い利回りを提供します。
小口からの分散投資が可能
Jリートは個別銘柄への投資だけでなく、ETFや投資信託を活用することで少額から分散投資を実現できます。例えば、GLP投資法人(物流施設)とインヴィンシブル投資法人(ホテル)を組み合わせることで、安定収益と成長性を両立させる投資ポートフォリオが構築できます。
投資戦略
投資タイミングとリスク
ホテルリートを含む投資商品は高い分配金利回りが魅力ですが、その反面、市場の変動や施設の稼働率低下といったリスクを伴います。インバウンド需要の増減や自然災害、金利上昇といった外部要因がホテルリートに与える影響は無視できません。
このようなリスクに対応するには、収益性とリスクのバランスを重視した投資が必要です。リートのポートフォリオが多様化されているかを確認することが重要です。特定の地域やホテルタイプ(ビジネスホテル、リゾートホテル、シティホテルなど)に依存しすぎていない投資先を選ぶことで、リスクを分散できます。また、稼働率と収益性(RevPAR)の推移をチェックし、安定的な収益を確保しているリートを選択することも、リスク管理の一環です。
さらに、金利変動リスクに備えるため、財務基盤が強固なリートを選ぶことも重要です。借入期間の長期化や分散化が進んでいるリートは、金利上昇局面でも比較的安定した運営が可能です。
分散投資の重要性
分散投資は、投資ポートフォリオ全体のリスクを抑えるうえで欠かせない要素です。ホテルリートは魅力的な投資対象ではありますが、特定のリートやセクターに資金を集中させると、想定外のリスクに直面する可能性があります。そのため、複数のリートを組み合わせて投資することが推奨されます。
ホテルリートだけでなく、オフィスビルや物流施設、商業施設に投資するリートをポートフォリオに加えることで、収益源を分散することが可能です。また、異なる地域や業態に特化したリートを選ぶことで、地域や市場の偏りによるリスクを軽減できます。複数のリートに個別に投資するだけでなく、Jリート指数に連動したETFや、複数のリートに分散投資している投資信託を利用する方法があります。これらの商品を活用することで、小額から広範囲な分散を実現し、効率的な投資が可能です。また、時間分散の観点から、積立投資や定期的な買い増しも有効な戦略といえます。
まとめ
インバウンド需要の拡大により、ホテルリート市場は今後も高い成長が期待されます。特に、インヴィンシブル投資法人のような宿泊施設特化型リートは、収益性の高さや安定性が魅力的です。また、物流施設や商業施設リートを組み合わせることで、分散投資によるリスク軽減を図ることも重要です。Jリートの持つ成長可能性と利回りの高さを活用し、今後の投資戦略を検討してみてはいかがでしょうか。